変形性膝関節症は、加齢変化の一種で関節の軟骨の変性を中心とした非炎症性疾患です。男性よりも閉経後の女性に多くみられます。
〜症状〜
症状は、動作開始時や歩行時の関節痛、変形(日本人の多くが内反変形(O脚))、 曲げ・伸ばしが不自由になる可動域制限、膝に水が溜まるなどがあります。
レントゲンでは、関節の隙間が狭くなる、骨棘の増殖、軟骨の磨耗、変形などが見られます。
〜分類〜
日本では、グレード0〜4の5段階に分類されています。
〜治療法の選択〜
当院では、患者様の痛みや日常生活での支障を問診したうえで、医師・理学療法士がレントゲンや
膝関節の状態を確認し、リハビリを中心とした保存的治療(手術を行わない治療)と観血的治療(手術を行う治療)を行っています。
1.保存的治療治療
《リハビリ》 ・痛みに合わせて膝関節の曲げ伸ばしの運動や歩行・階段の上り下りなど日常生活において 重要な筋肉の筋力強化を行っています。 ・また、歩行や立ち上がり、着座などの動作指導を行い、日常生活の動作を楽に行えるように
しています。 ・温熱療法や電気治療を行うことで痛みや関節のこわばりの改善を図ります。
《装具療法》
足底板や(支柱付き)サポーター、杖を使用することで膝関節の痛みの軽減や不安定性の制御を 図ります。
《薬物療法》
痛み止めの服用や湿布を用いて痛みをコントロールします。 注射:関節内にヒアルロン酸の注射をすることで膝の曲げ伸ばしや痛みの軽減を図ります。
《当院の運動療法の効果》
2.観血的治療
保存的治療を行ったうえで痛みが残り、日常生活に支障をきたす場合、観血的治療を選択します。 当院では高位脛骨骨切り術と人工関節置換術の2種類を施行しています。 入院期間は3〜4週間で、退院時には手術前と同様かまたはそれ以上の歩行様式で歩くことが できます。
《高位脛骨骨切り術 HTO:High Tibial Osteotomy》
内反変形(O脚)が進行することで膝関節の中でも荷重ストレスは特に内側に偏り、 膝関節の内側に痛みが生じやすくなります。
この手術では、脛の骨を切り少し角度を変えることで、荷重ストレスを内側から外側に移行させ、 痛みの緩和を図ります。関節の外側の軟骨の状態が比較的良好な方が行う手術です。
メリット:手術による侵襲が小さい自分の関節を温存できるため、スポーツや正座が可能な場合もある
〜高位脛骨骨切り術(HTO)のリハビリプログラム〜
・ 高位脛骨骨切り術後は、骨切りを行った自家骨と挿入した人工骨との癒合を促すため、歩行や 階段昇降時にはギプスシーネを装着します。
・ ギプスシーネ装着期間は、手術後1ヶ月(4週間)で室内のみ除去、手術後1.5ヶ月(6週間)で完全除去を目安としています。この時期にレントゲンを撮影し、その結果や筋力、歩行状態などを踏まえ、医師が許可を出し、理学療法士が動作指導を行います。
・ また、手術直後は人工骨を保護するため歩行や階段昇降時には手術側の足にかかる体重を制限 して行います。 ・ 立ち上がりや着座時には、手術側の足に負担がかからないよう動作の指導を行っています。
・ ウォーキングやスポーツ動作などはレントゲン撮影を行い、骨の癒合状態や膝関節の動き、 筋力に応じて医師が許可を出し、理学療法士が動作指導を行います。
【抜釘術】
・ 骨切りを行った自家骨と人工骨は約1年〜1年半ほどで癒合が完成します。
レントゲンを撮影し、骨の癒合の完成が確認できたら、高位脛骨骨切り術で挿入したプレート
及びスクリューを抜去する手術を行います。
・ この手術をするための入院期間は1週間程度です。
手術後には固定や荷重制限などはなく、比較的早期に日常生活、仕事復帰が可能となります。
スポーツ復帰に関しては、スクリューを抜去した部分の骨の癒合次第で可能となります。
《人工膝関節全置換術 TKA:Total Knee Arthroplasty》
変形した関節の表面を金属でできた人工のものに置き換える手術です。 変形性膝関節症の末期(グレードV〜W)となり、関節の変形が大きく、痛みや曲げ伸ばし
などで日常生活に支障をきたす場合に行います。 近年の人工関節は、安定した素材の提供が可能となり、20年前後の安定した耐久性がある といわれています。
メリット:手術翌日から全体重をかけて立ち、歩くことができる 。
新しい膝に慣れることで痛みが気にならなくなる。
〜人工膝関節置換術後のリハビリプログラム〜
・ 術後1日目より全荷重可能、歩行器を用いて歩行を行います。
・ 退院は術後3〜4週で、術前と同様またはそれ以上の歩行様式での退院となります。
・ 術後は1年に1回の定期レントゲン・診察を行います。
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